シン・仮面ライダー

シン・ウルトラマンを観に行ったときに、映画館でシン・仮面ライダーのフライヤーを見つけてから“公開されたら観に行こう”と心に決めていた。

仮面ライダーは特別好きなわけでもなかったけど、シンシリーズは全部気に入っていたので観ない理由がない。

とは言えここ最近は自分のことでいっぱいいっぱいになっていて、そういえばいつ公開されるのだろうと調べてやっと、すでに上映が始まっていることを知る。

映画館は少し遠い上に今のわたしには足がなく、公共交通機関も控えている。
結局母に頼らざるを得なくなったのだけど、母も幼少期にすこし仮面ライダーが好きだったらしく、どうせなら一緒に観たいと言ってくれた。
それなら妹も、と一か八かでお誘いしてみると、まったく興味がないはずなのに即答でOKが返ってきた。
そしておそらくこの作品のターゲットど真ん中であろう父、乗り気じゃなかったのに話を聞いているうちに観たくなったらしい。

最初は暇なときにちょっと観に行こうかな、といった具合のテンションだったはずが、いつの間にか家族全員で観に行く流れになっていた。

シン・ウルトラマンで自分はウルトラマンが好きであることに気付いたけど、
シン・仮面ライダーを観てじつは特撮ヒーロー自体が好きなのかもしれないと思った。

変身やサイクロン号の変形、戦闘のシーンにときめきが止まらなかった。
変身シーンは派手な演出等もなくとてもシンプルでかっこいい。

わたしは仮面ライダー(1号)のことを全然知らなかったので、元々は悪の組織に連れ去られて改造人間にされるところから脱出したのが始まりだということに驚いたし、ヒーローにしてはモチーフがバッタで少し不気味な見た目であることにも合点がいった。

世界平和のために戦うヒーロー、などという単純なものではなかった。

そもそも戦うことを望んでいないし、常に葛藤しながらも立ち向かっていく姿が完全にエヴァのシンジくんと重なってしまった。
人類の魂を集約し、噓のない世界をつくるという"ハビタット計画"も人類補完計画によく似ているし、わたしはきっとそういうのを好んでいる。
これが庵野監督特有のものなのか、原作にも同じ描写があるのか分からないので、またじっくり観てみたい。

帰ってからレビューや考察を読み漁り、色々と思考を巡らせた時間がとてつもなく楽しくて幸せだった。
映画を観ている時間と同じくらい、考察が好きなのかもしれない。
NHKで放送されていたドキュメンタリーも観たけど、映画と同じくらい(色んな意味で…)面白かった。

賛否両論あるようだけど、数十年前の作品を題材とした映画について、ああだこうだと議論する機会が生まれたことに意味があるのかなとも思う。

うちの家族は皆それなりに満足した様子で、映画のあとにランチをしている間も感想トークが止まらなかった。

何より父が大喜びだった。最後にレッツゴー!!ライダーキックが流れたときは鳥肌がたったと。
昔好きだった仮面ライダーの姿や音楽を、劇場で見て感じられるだけでテンションが上がるようだった。


後から母に聞いたのだけど、父がぼんやりと「映画館で映画を観るっていいなあ…」と呟いていたらしい。
思いつきでとった自分の行動が、誰かの価値観を僅かながら変えることもあるんだなと、少し嬉しくなった。