80デニールの女

通勤ラッシュ、みんなゾンビみたいだ。足を踏んだり踏まれり、ぶつかったり、舌打ちされたり、ただでさえ憂鬱な朝に人間の嫌なところが凝縮された満員電車に乗るのが大嫌いだ。寒波がどうのこうのでいつにも増して寒いから、お昼ご飯に食べたクラムチャウダーはとても優しい味がした。いい女ほどタイツのデニール数が少ないとかいう話を聞いたことがあって、変な意地を張って20デニールのタイツを履いていたけど、すぐ破れるので80デニールに変えたら長持ちするし暖かいし最高である。良い女にはなれなかった。

彼と喧嘩すると私は決まって何も言えなくなってただ泣くことしか出来なくなってしまう。今自分が何を言われているのか、何を考えているのか、とにかく思考が停止して会話ができなくなる。何かを口にしたと思えば、小学生でも言えるような言葉だけ。
このコミュ障じゃどこの会社からも必要とされないし転職なんてできないよ、どこに行ったって一緒。いつまでも被害者ヅラしてんじゃねえよ。
と言われ、本当に正論だし自覚をしていながらも受け入れられていなかったことなのでただただ死にたくなってしまった。私はこのまま生きててよろしいのでしょうか、と。しばらく落ち込んで涙が止まらなかった。

コミュ障、これから私が一生付き合っていかねばならないであろう。自分が周囲と比べておかしいと感じ始めたのは中学生からで、それから何度か改善しようと試みるも、失敗することにより余計に悪化するということを繰り返してきた。これからでもまだ間に合うだろうか。誰と話していても皆が私に合わせてくれているような気がする。大人が子供に話しかけるように。私は宇宙人なのでしょうか。何がいけないのでしょうか。どうしてこうなってしまったのでしょうか。どうして皆は当たり前のようにすらすらと雑談ができるのでしょうか。私って、一体何なんだろう。意味もなく前を向くしかない。